コンテンツへ移動

【世界に一つ!加東遺産】#005 上鴨川住吉神社と神事舞

かとうトリビューンがお届けする【世界に一つ!加東遺産】シリーズ。

今回は、上鴨川住吉神社と神事舞について紹介します。

上鴨川住吉神社

所在地:兵庫県加東市上鴨川571

TEL:0795-48-3046(生涯学習課文化財係)

上鴨川住吉神社は上鴨川集落から南へ約1km離れた独立した丘、野尻山麓に鎮座し、街道(県道311号)から34段の石段を登ったところに平坦地417坪(1,376㎡)を境内としています。

上鴨川住吉神社は、平安時代中期には成立していたとされており、久米荘もしくは大河荘の領家である摂津住吉神社の勧請により、建立されたものと考えられています。

毎年、10月の第1土曜と日曜の宵宮・本宮には、中世から受け継がれた神事舞が奉納されます。

本殿 重要文化財

(出典元:兵庫県加東郡教育委員会『上鴨川住吉神社の神事舞』)

本殿を中心に鳥居、割拝殿(わりはいでん)、御供部屋(ごくべや)、長床(ながとこ)、舞堂(まいどう)や小宮などの建物が建立されています。

境内は神事舞が奉納される古来の景観を保全するため、史跡に指定されています。

祭神

  • 表筒男命(うわつつのおのみこと)
  • 中筒男命(なかつつのおのみこと)
  • 底筒男命(そこつつのおのみこと)
  • 息長足姫命(おきながたらしひめのみこと)

三間社流造、屋根檜皮葺の建物で、正和5年(1316年)に創建。

永享6年(1434年)に再建、現在の本殿は、明応2年(1493年)に再々建されたものです(棟木・天井梁・内陣扉小脇板墨書銘)。

修理履歴

  • 貞享3年(1688年)屋根葺替、軒廻り(丸桁含む)新調等
  • 享保6年(1721年)屋根・小屋組・野棰修理
  • 文久2年(1860年)屋根葺替
  • 明治26年(1893年)向拝浜床修理
  • 大正7年(1918年)箱棟・鬼板・千木・勝男木等新調
  • 昭和25年(1950年)屋根葺替
  • 昭和45年(1970年)解体修理
  • 平成28年(2016年)屋根・塗装工事

昭和35年6月9日に国重要文化財に指定されました。

本殿蟇股(かえるまた)

蟇股は、神社仏閣建築で見られるもので、日光東照宮の「眠り猫」が彫られているものと説明したほうが馴染み深いかもしれません。形が、カエルが股を広げて踏ん張っているように見えることから、この名前がついたようです。

上鴨川住吉神社では、本殿に向かって左よりツバキ、マツ、ビワを意匠した蟇股が刻まれています。

ツバキ
マツ
ビワ

そのほか、手狭・木鼻などに多彩で地方色のある彫刻を楽しむことができます。

神事舞

神事舞は、毎年10月の第1土曜と日曜に宵宮・本宮と2日かけて、宮座が奉納する古式ゆかしい祭儀です。神事舞は、御神楽・太刀舞・獅子舞・田楽舞などが演じられています。鎌倉期から伝わると言われていますが、その発祥は明らかではありません。

ここには厳格に守られてきた宮座制度があって、中世以来の郷村組織をみることができるのも貴重です。昭和52年5月17日に国重要無形民俗文化財に指定されました。

厳格な宮座制度

ナカナラシ(芸能の練習)昭和54年撮影(出典元:播磨学研究所『播磨学紀要』第26号

上鴨川住吉神社の神事は、厳格な世襲的宮座制度によって支えられています。

この宮座は、若衆・清座・年老・横座により組織されていますが、宮座に入ることができるのは、上鴨川村70余軒すなわち住吉神社氏子のなかで、この地に生まれた長男のみに限られます。

若衆は神事を始めるため年寄の横座に挨拶(出典元:播磨学研究所『播磨学紀要』第26号

どんなに古い格式の家柄であっても、二男三男以下であれば絶対に入ることは許されず、ギオン(祇園)座と呼ばれる別の座で祭儀の末端的奉仕役を務めるだけです。

宮座の組織

  • 若衆(わかいしゅ):一家の長男で、8~9歳ぐらいで宮座入りし、次の「清座」になるまで17~18年もっぱら祭りの舞を行います。この若衆入りが武家の元服の形を意味したのではないかとも思われています。
  • 清座(きよざ):8人。若衆を終えた者が毎年一人ずつ入り、これと入れ替わりに一人が「年寄」になります。若衆の指導、先導的役割、祭りの実質的指導者です。
  • 年老(としより):「清座」を終えた者全員が「年老」になり、32~33歳から一生続く神事に直接関与せず、神事の根本的なことや経済面などを協議します。
  • 横座(よこざ):正副横座があり、神事の最高責任者です。「年老」の最高位。宮座入りした順序で、当人の意思で引退するまで務め、任期はありません。
長床での宮座の座席(出典元:兵庫県加東郡教育委員会『上鴨川住吉神社の神事舞』)

上鴨川住吉神社 神事舞

午後6時ごろ、清座の3人が持つ松明に火が灯され、これに先導され、あるいは促され、太刀を先頭に宮めぐりが始まります。おごそかに、最も厳粛に「上鴨川住吉神社 神事舞」の始まりです。

「宮めぐり」若衆の先頭は太刀を水平に捧げ持つ。それに続く若衆も閉じ扇と洗米を半紙に包んだものを持ち、腰には短い太刀を差す。
「盃ごと(長床)」若衆は素足のまま長床に入る。甘酒を用い三献。その後、裸になり斎灯のためにミソギを済ませる。
「斎灯」ミソギを済ませた若衆はナカシバをマタキリに寄せかけ、長床に焚かれていた火を点火する。
「御神楽(割拝殿)」神主を中心とした清座の行事。
「太刀舞(リョンサン舞)」舞人は紙製の鳥兜をかぶ り、太刀を腰につけ、鼻高 の面をつける。先端に御幣 をつけた鉾を持って舞う。
「獅子舞」田楽系統の獅子舞である。非常に短いもので、所作もなく境内を1周するものである。
「田楽」踊手は栗皮色の千早を着て、御幣の紙垂の結びつけたガッソウを頭にかぶる。笛と太鼓に合わせて、締太鼓やビンザサラ、鼓やチョボ(銅ばつ)を持った踊手が跳躍しながら踊る。

本宮(10月第1日曜日午前11時頃から)

  • 盃ごと
  • 太刀舞
  • 獅子舞
  • 田楽
  • 扇の舞
  • 高足
  • 能舞七番
  • 神の相撲

そして、午後4時ごろに餅まきが行われます。田楽と猿楽という舞踊が宮座によって、継承されており、中世期の特長を色濃くとどめた各舞踊が現代まで受け継がれていることは大変貴重なことです。

令和6年度祭礼(神事舞)

10月5日(土)~10月6日(日)

▼こちらの記事もおすすめ